全国大学院特集

東京都市大学大学院
私立(共学) トウキョウトシダイガクダイガクイン [PR]

修了生インタビュー

直流遮断器の消弧室の密閉小型化を目標に、
制御が難しいアーク放電について研究。
海外で活躍することのできるエンジニアを目指しています。

総合理工学研究科
電気・化学専攻 博士前期課程
2024年3月修了
●河野 聖(こうの あきら) さん
2022年3月、東京都市大学工学部(現・理工学部)電気電子工学科(現・電気電子通信工学科)卒業。同年4月、同大学院総合理工学研究科 電気・化学専攻博士前期課程入学。2024年3月同課程修了。同年4月、国内外の水・環境インフラ事業に取り組むメタウォーター株式会社に入社。

放電に興味をもち研究に取り組み
電子や粒子レベルから現象を解析

大学時代は電気電子通信工学科で学び、電気が空気中で発生する放電現象について研究しはじめ、大学院でも引き続き研究に取り組んだ。
「放電は、気体などの絶縁体に電圧がかかることによって、絶縁破壊が生じて、電流が流れる現象のことです」
一対の電極を空気中に置いて両極間に電圧を加えていくと、電圧が低い範囲の場合はほぼ一定のごく微少電流(0.1μA以下程度の暗流)が流れる。これは空気が通常状態の紫外線や放射線の影響により、わずかに電離(イオン化)されるために生ずる。そのため、これらの影響を取り除くと電流は流れない。
一方、電圧をさらに高めていくと空気の絶縁性が低下することによって電流は急増していく。
「放電の進行過程は、コロナ放電、雷のような火花放電、グロー放電、アーク放電に分類されますが、それぞれの段階において特性があります」
コロナ放電は気体が局部的に絶縁破壊されることにより生じる現象のことだが、電界分布が著しい不均一な状態とコロナの発生によって最大電界強度が減少しなければ生じない。そのため一対の電極間に電圧を加える場合は、この条件が満たされないことからコロナ放電は生じず、暗流状態から火花放電に移行する。
火花放電は、気体の絶縁破壊が局部から全路に移行する短時間に生じる現象で、放電電圧、電極間隔、気体圧力の間にパッシェンの法則が成立する。そして、グロー放電とアーク放電は気体が全路破壊されているときの形態をいい、アーク放電は気体放電の最終形態となる。
「精度の高い直流遮断器の開発にはアーク放電の特性解明が欠かせず、直流遮断器の内部でどのような現象が起きているのか、電子や粒子レベルで発生現象をシミュレーション解析し、さらにその結果を理論面から検討するという形で研究を進めていきました。
特に私が大学院で取り組んだ課題は、直流遮断器の消弧室を密閉小型化するためにはどのように設計すべきかについてです」
落雷時や故障時に発生する事故電流を遮断するために鉄道や電力系統などの事業会社が導入している直流遮断器は、事故電流が流れた際に電極を開極することで電流を遮断しようとするが、その際に高温のアークが電極間に形成される。このアークは導電性が高いことから、電流はアークを介して電極間を流れ続けてしまう。高温のアークを迅速かつ確実に消弧することは容易ではなく、直流アーク遮断の制御は難しい領域になっている。
「電気自動車も直流ですから、直流遮断器を向上させる技術は異常通電から人と車を守るためにも大切です」

国際会議での発表にも挑戦
グローバル・エンジニアを目指す

河野聖さんが大学院に進学したのは、他にも理由があった。
「将来、海外で活躍することのできるエンジニアになりたかったのと自分の視野を広げたかったからです」
研究活動のかたわら2年次には米国で開かれた「ICOPS(プラズマサイエンス国際会議)」や「GEC(ガスエレクトロニクス会議)」に参加した。
「いずれも放電に関わる国際会議で、プレゼンテーションをしたり、ポスターセッションに参加したりしました。そのほか、日本国内で開催された学会に参加しましたが、その際も英語でプレゼンテーションしました」
現在、河野聖さんは、国内外の水・環境インフラ事業に取り組むメタウォーター株式会社で活躍している。
「当社は、人々の生活や産業になくてはならない水・環境事業に携わる企業グループとして、機械技術、電気技術、ICT、運転・維持管理ノウハウを融合し、国内外の水道、下水道、資源環境の各分野で事業を展開するとともに、環境保全や地域貢献の取り組みを進めています。
水と環境を通じて社会課題の解決に貢献できるよう、大学院での研究で培った専門性を生かしながら、仕事を通して新たな知識と技術を身につけ、さらに成長していきたいと思っています」

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