全国大学院特集

早稲田大学大学院 会計研究科
私立(共学) ワセダダイガクダイガクイン [PR]

WEB講義◎管理会計

組織のパフォーマンスを向上させるマネジメントシステム。
財務・非財務情報の分析を通じて、組織の価値向上をサポートする。

早稲田大学大学院
会計研究科(専門職大学院)
●目時 壮浩(めとき たけひろ) 教授
早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程満期退学。博士(商学・早稲田大学)。早稲田大学大学院会計研究科准教授などを経て、2022年より現職。専門分野は管理会計。シドニー大学ビジネススクール客員研究員、日本原価計算研究学会幹事、会計検査院特別研究官などを歴任。主な著書に、『異論・正論 管理会計(共著)』『実務に活かす管理会計のエビデンス(分担執筆)』。

未来会計とも呼ばれる
管理会計

組織の活動を測定・管理する手段である会計には、財務会計と管理会計の二つの領域がある。財務会計は、主に組織外部のステークホルダーが投資などの意思決定を行う上で役立つ財務情報の提供を目的としている。一方、管理会計は、組織内部において経営者や管理職によるマネジメントに資する情報提供を目的としている。組織のパフォーマンスを最大化するために、財務・非財務情報の分析を通じて意思決定に資する情報を提供したり、戦略や計画の実現に向けて組織をコントロールするための仕組みをデザインする。会計情報を効果的に活用しながら、戦略の策定と実行を支えることが管理会計には期待されるのである。また、財務会計は、過去一年間の事業活動の結果を報告することを目的とすることから「過去会計」としての性格を持つのに対して、管理会計は、未来に向けて組織のパフォーマンスを高めるためのマネジメントシステムを構築・運用することを目的とすることから「未来会計」とも呼ばれる。
私が専門としているのは管理会計であり、授業では財務(経営)分析、利益計画、予算管理、資金管理、意思決定会計、原価管理、業績評価などにおける重要な論点を解説するとともに、様々な業界における管理会計実務や、最新の管理会計研究における知見を紹介し、管理会計の本質的な理解を深めていくことができるように心がけている。

管理会計プロフェッショナルとしての
FP&A

管理会計は組織のパフォーマンスや組織成員の行動に影響を与えるマネジメントシステムである。それゆえに、適切な経営判断や組織行動を促すためには、組織の規模や風土にあった管理会計の仕組みを構築する必要がある。管理会計の仕組みが適切にデザインされなければ、経営判断の誤りや、組織目標と整合しない行動を許容することになり、ひいては、組織の価値を低下させることにもなりかねない。にもかかわらず、日本企業においては、管理会計が組織のパフォーマンスに及ぼす影響を十分に理解している経営者は決して多くはないのが実態である。日本では、経営企画部、経理部、財務部などが、管理会計の様々な機能を分担して行っており、管理会計の専門部署が明確ではないことが多い。一方、欧米企業においては、社長室やCFO(Chief Financial Officer)直属の組織として管理会計の専門部署が設けられることが多く、このような経営における管理会計の位置づけの違いが、日本と欧米諸国の間の企業価値ギャップの原因となっているという見方もある。
そこで注目されているのが、FP&A(Financial Planning&Analysis)という職種である。FP&Aは、経営者などが計画の策定や具体的な施策を決定するために、財務・非財務情報を収集・分析し、経営者の意志決定をサポートする管理会計のプロフェッショナルである。欧米企業においてはCFOの直下にFP&Aを置くことがスタンダードとなっているものの、日本企業においては、FP&Aを設置する企業はまだまだ限定的である。日本企業が企業価値を向上させていくためには、FP&Aを組織に根付かせることが鍵となるであろう。

パブリックセクターの
パフォーマンス向上にも資する

管理会計は企業のみを対象とし企業活動においてのみ有効であると思われがちだが、行政組織や医療組織などにおいても有効活用に向けた議論が進められている。パブリックセクターは、利益を生み出さない非効率とも言えるサービスを担っているが、それだけに企業と同等もしくはそれ以上に効率的、効果的なマネジメントを可能にする手法が必要とされるのである。しかし、住民が健全かつ円滑に市民生活を営むためのインフラを提供する公共サービスは、コストがかかるからと言って切り捨てられる性質のものではない。それゆえに、最適なコストのもとで、いかにしてパフォーマンスの高い公共サービスを実現するのかについて検討する必要がある。この点、諸外国では多くの管理会計研究者がパブリックセクターを対象とした知見を蓄積しており、行政組織、医療組織における経営実務においても、経営計画、財務管理、業績評価、およびコストマネジメントなどの管理会計能力を持つ人材に対するニーズが高まっている。
私が担当する科目の「パブリックセクターの管理会計」は、パブリックセクターのパフォーマンスマネジメントに関する基本的知識を修得してもらうとともに、国内外の事例や最新の研究動向に触れつつ、ディスカッションを通して理解を深めていく。国内の大学院の中でも、本研究科はこの分野を学べる希少な存在になっている。

管理会計理論や実務の背後にある
「なぜ」を思考し、高度な知見を獲得

管理会計は、経営実務と深く関わる学問領域である。授業では、各論点の背景や実務での適用事例、さらには最新の管理会計研究についても紹介している。管理会計を表面的に理解するのではなく、本質的に理解してもらえるように、事例や研究論文を用いて、管理会計理論や実務の背後にある「なぜ」を考えてもらう。また、さらに高度な管理会計の知見の獲得のために、専門性の高い論点についてディスカッションやプレゼンテーションを中心に展開される「パフォーマンスマネジメントワークショップ」や、財務・非財務情報についてRやPythonなどの統計分析プログラムを用いた分析技術を身に着ける「管理会計情報のデータ分析」などの科目も設けている。
実務において、管理会計は組織の状況に合わせて多様に変化する。会計の数値情報を見て何となく理解したつもりになりがちだが、大切なのは「数字の裏にある現実をイメージできる」会計のプロフェッショナルになることだ。そのためのさまざまな工夫を授業に盛り込んでいる。

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