法科大学院ガイド

日本大学法科大学院
私立(共学)東京 ニホンダイガク

WEB講義◎民法を学ぶ意義

民法は、私人の権利を保障する、私法における一般法。
法的安定性と具体的妥当性のバランスを考慮することが必要。

日本大学法科大学院 教授 佐々木 良行(ささき よしゆき)
●1993年3月、日本大学大学院法学研究科私法学専攻博士前期課程修了。2001年10月、弁護士登録。2021年4月より、現職。主な論文・著書に、『請負契約における担保責任』『詐害行為取消権の相対的取消しに関する一考察』『商事法講義1 会社法』『訴状・答弁書・準備書面作成の基礎と実践(規範的要件の主張の要領)』。

特別法にない規律は
民法を解釈して適用

民法は、私人と私人の間における権利義務を規律する私法における一般法と位置づけられ、商法などの特別法で規律されていない事柄については、民法を解釈して適用される。法典は、総則、物権、債権、親族、相続の5編から成る。
「普段は民法を意識することはないかも知れませんが、民法は私たちの生活や会社での事業と深く関わっています。電車やバスに乗ったときであれば約款、物を購入したときや家を借りたときには契約、また、交通事故を起こした際は不法行為、親族が亡くなった際は相続と、私たちの人生と密接な関係にあります。そのため条文数は1000条を超えています。また、私法における一般法でもあるため、条文は短めで抽象的な文言が多い傾向にあります。それだけに、条文をどのように解釈するのかがポイントになります」と、日本大学法科大学院の佐々木良行教授が解説する。
民法は、近年になって大幅な改正が相次いでいる。2019年7月1日から遺産分割、遺言や遺留分制度に関して見直された民法が施行され、1896(明治29)年に民法が制定された後、ほとんど改正がされてこなかった債権関係の規定を見直した民法が20年4月1日から施行された。

社会・経済の変化に対応し
改正が続く民法

懲戒権、嫡出推定、女性の再婚禁止期間、嫡出否認制度などの見直しがさらに行われており、22年2月に要綱がまとめられた。
「いずれの改正も、社会・経済の変化への対応であったり、民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から実務で通用している基本的なルールを適切に明文化したりすることを目的にしています」
民法という世界の入り口はとても入りやすいものの、学説や判例の理解が進めば進むほど、その広大さや奥深さに触れることにもなると同教授が解説する。
「民法を解釈する際には、当事者の利害関係の調整や、法的安定性と具体的妥当性のバランスなど、考えなければならない要素が少なくありません。しかし、それだけやりがいがあり、とても興味深い法分野であることを意味しているとも言えます。学習のコツは、どのような解決策がふさわしいのか、法律要件を事実に当てはめながら、事例問題の当事者を自らに置き換え、多面から検討してみることです」

ケーススタディ

民法(親子法制)等の改正に関する要綱(2022年2月14日決定)
●嫡出推定制度の見直しについて
現民法772条は、婚姻成立の日から200日を経過した後に生まれた子と、婚姻解消の日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものとして当該婚姻の夫の子と推定するとしている(嫡出推定制度)。
しかし、女性が、男性との離婚後300日以内に、別の男性との間に子を出生した場合、子は前夫である男性の子と推定されるため、女性は子の出生届を出すことをためらい、無戸籍者が発生するという問題が起こった(300日問題)。
そこで、改正民法の要綱は、女性が婚姻中に懐胎した子のみならず、婚姻前に懐胎した子であっても、婚姻が成立した後に生まれた子は当該婚姻における夫の子と推定するとしつつ、子を懐胎した時から子の出生の時までの間に二以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定するものとしている。
このような規律であれば、婚姻解消後300日以内に生まれた子であっても、再婚後の男性の子と推定されることになるため、出生届の提出をためらう必要はなくなる。
併せて、100日間の再婚禁止期間(民法733条)の規定が必要なくなることから、その廃止も提案されている。

私の授業
●段階的かつ発展的に学習できるカリキュラム。初学者でも安心して学べます。

日本大学法科大学院では、民法を段階的かつ発展的に学習していけるようにカリキュラムを設けています。1年次は「民法ⅠからⅤ」と「民法基礎演習」を通して、民法の基礎理論の習得を目指します。2年次の「民法総合Ⅰ・Ⅱ」では、演習を通じて問題解決能力の習得を目指し、3年次の「民事法系演習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」の実践的な演習で、法律実務家に求められる法的思考の涵養を目指します。
私が担当する「民法Ⅲ・Ⅳ」「民法基礎演習」は、基本事項の習得を目標として作成したレジュメを使って、授業を進めていきます。レジュメには学習事項や論点の把握・理解がしやすいケースを多く盛り込んでいます。授業では、民法の体系や全体像を踏まえながら、基本的知識を身につけることができるようにしています。授業後には、授業で触れたケースの解説レジュメの配布と復習課題の提示も行っています。

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