法科大学院ガイド

法科大学院【基礎理解講座】

13バックナンバー(1) 司法試験の合格者数の行方は?

法科大学院制度がスタートした背景には、司法制度改革審議会が取りまとめた「意見書」がある。同審議会は99年7月に内閣の下に設置され、21世紀の日本の社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、その基盤の整備のあり方と方向性をまとめた「意見書」を01年6月に提出した。
 「意見書」は、社会・経済環境の変化に合った法曹の必要性を説き、欧米並みの法曹人口割合を目指すべきだと指摘した。そのため旧司法試験の合格者数を04年には1500人程度に引き上げるとともに、04年4月には法科大学院制度をスタートさせ、10年ごろには3000人程度の合格者数を輩出できる体制を整えれば、法曹人口は当時の約2万人に対して18年ごろには5万人規模となり、法曹一人当たりの国民の数(2400人)は欧米並みに近づけるとした。
 これまでの合格者数の推移を見ると、予定通り04年の旧司法試験の合格者は1483人に引き上げられた。また、新・旧合わせた司法試験の合格者数は、1558人(06年)、2099人(07年)、2209人(08年)、2135人(09年)となり、10年ごろには3000人とした合格者数に向けて推移してきた。ただし、09年の新司法試験合格者数は2,043人にとどまり、08年に比べて22人減少した。初めて前回の合格者数を下回る結果となったが、これは新司法試験合格者の質を一定レベルに保つ、というメッセージとも受け止められる。
 新司法試験の合格者数は、「新司法試験合格者の質に一部問題がある」「法曹人口は足りている」などの意見が一部からわき起こったことから、抑制すべきではないかとの議論が08年から高まった。一方、「既存弁護士の利益を守るための意見だ」「法曹の活躍分野はもっと広がっていく」「新司法試験合格者ならではの高く評価できる点がある」などの反対意見も出され、拮抗している。
 その結果、司法試験の合格者数はどうあるべきかという議論は、法曹の質の問題に転換し、中央教育審議会法科大学院特別委員会では教育と志願者の質的確保が中心になり、議論されている。
 今後、新司法試験合格者数がどのように推移していくのかは、当初予定の10年3000人を目安にしながらも、法曹の質的確保が大きな前提となっているだけに、抑制される可能性が高い。また新司法試験合格者の質が問われているだけに、合格者の社会における活躍度合いによっても議論の流れが変わる可能性が高いし、今後の受験者の質によっても異なってこよう。
 いずれにしても、新司法試験合格レベルの力を身に付けようとする高い志と、法科大学院における教育をきちんと受けようとする強い姿勢を持ち得ていなければ、新司法試験合格というゴールは遠のいてしまう。

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